エクスペリエンス

「ガイアの夜明け」を見て思ったユーザーのニーズの引き出し方

大好きな番組をひとつ挙げろと言われたら間違いなく即答するのが、火曜日の夜10時からテレビ東京で放送されている「ガイアの夜明け」だ。外れがほとんどなく毎週必ず面白い。あ、もしも有料化されたら毎週500円までなら出します。

今週は、「激突!巨大家具メーカー」で、これまた面白かった。セルフサービスを徹底することにより安くて質の高い家具とともに日本に乗り込んできたスウェーデンのイケア、今までの成功体験を捨てラインナップをしぼり世界に挑もうとするニトリ、すばらしい家具はお客様にきちんとすばらしさを納得してもらえれば高くても必ず買ってもらえると考える大塚家具などなど、それぞれの会社のビジネスに対する熱いパッションを家にいながら見れ全く大満足だ。

その中でも特に感銘を受けたのが年間3億円を売り上げる大塚家具のセールスマンだ。前のエントリー「ソファ」でも書いたように、私も大塚家具にソファを見に行ったことがある。で、欲しい色がなくてやめたが30万円もするソファを買おうとしたことがある。

普通の家具の店員は、客が欲しいといったものを単に見せるだけだ。が、大塚家具の店員は違う。大塚家具の店員はおそらく以下のステップを踏むように教育されている。(と思う)

1.客が欲しいといった家具を見せる(が、本当にその家具が満足なのか客もよくわかっていない)
2.実際に見たり触ったり座ったりさせて、「どうですか?この家具?」と全神経を集中して傾聴する
3.「この客はこう言っているが、本当はこっちの方が満足するのでは?」と分析して客にさりげなく新しいことを気づかせつつ、別の家具を見せる
4.満足するのが見つかるまで2、3を繰り返す

客が店に来るまでは自分でもはっきりしなかった欲しいイメージを一緒に絞り込んでいくわけだ。もっともこれは上から下まで在庫が豊富にある大塚家具だから出来るのだろう。私は営業職ではないが、多分これは営業の基本だと思う。ともかくストレートに「どんなものが欲しいか?」とユーザーに聞いても、それだけを用意すればいいわけではないということは最近実にいろいろな本やブログで目にする。

たとえば、CNET Japanのブログ中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイルのエントリー「ユーザー指向のもの作りに関する一考察」では、以下のようにある。

そこには、自動車産業の父、Henry Fordの言葉「もし私がカスタマーに何が欲しいかと尋ねたら、彼らは『もっと早い馬が欲しい』と言っていたでしょう」が引用してあり、「カスタマー(顧客)の声を聞くことは大切だが、彼らに『何が欲しいか』を聞いても必ずしも答えは出て来ない。それよりも彼らの行動を良く観察し、どんなところで苦労しているか、彼らなりにどんな工夫をして今あるものを使いこなしているかを理解した上で、何を作るべきかを考えるべきだ」と結論付けている。

 ものすごく共感できる。この業界にいると、「ユーザーの声を聞くことは大切だ」というセリフは良く聞くが、それを頭から「ユーザーが欲しいと言っているものを作れば良い」と誤解している人たちが結構多いので困る。「中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル、ユーザー指向のもの作りに関する一考察より引用」

また私の好きな本ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たちの0章「メイド・イン・USA」にも次のようにある。

フォーカスグループに車をデザインさせるのは、短期的にしか成功しない。長期的にはよいデザインに賭けるほうが勝つ。フォーカスグループはその時流行りのうわべの装飾を欲しがるかも知れない。だが本当に欲しいのは、洗練された買い手の真似をすることだ。売春婦のヒモや薬物密売人だって、医者や弁護士がキャデラックからレクサスに替えたことにいずれ気が付いて、真似をし始めるだろう。

*(訳注)フォーカスグループとは製品のデザイン段階で、対象となるユーザー層からの意見をデザインに反映するために集められるユーザーのグループのこと。製品のコンセプトのプレゼンや試作品を基にユーザー同士でディスカッションを行う。「ハッカーと画家 0.メイド・イン・USAより引用」

どのビジネスも長期的な成功の秘訣はこのあたりにあるのだと思う。

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