先日のエントリーで、最近ブログでiPhoneアプリのRSS ReaderのBylineについてべた褒めしたところ、さいとさんからLDR Touchとどう違うの?とのコメントがあった。で、すぐに「いやいや、全然いいですよ。なぜなら~」とコメント欄に書こうとしたがなかなか「よさ」を文章にするのが、難しいな-と悩んでいた。
さて、関係ないが「パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則」を読んだ。この本で建築家のクリストファー・アレクサンダーが、ブラジルの首都ブラジリアなど人工的に造った都市に比べて、ローマやパリといった自然都市が持っているものとして「生き生きとした建物や町が持つ特性」を持つことを発見し、それらに「無名の質(Quality With No Name=QWAN)」と名付けていることが紹介されていた。
この本では、建築と同様にソフトウェア開発の分野でも無名の質を備えた都市を造ろうとするクリストファー・アレクサンダーのアプローチ共通部分があり、実際にアレクサンダーのアプローチをソフトウェア開発に応用する試みも紹介されていた。で、思ったのがBylineが備えているのが、「無名の質」ではないのか?という仮説である。
使いながら注意深く観察してみると、Bylineは以下の点がLDR Touchと比べて優れている。(と思った)
- RSSのキャッシングが可能で電車内など圏外でもRSSを読むことが出来る。
- メニューのアイコンに未読数が赤丸で表示されるので、ついつい押してしまうよう工夫されている。
- 圏内ならばフォルダ移動したタイミングで自動でフィードが更新され、しかもビジュアルに新着フィードが追加されるのが分かる。
- 更新時に各フォルダーの未読数を増やす場合もストップウォッチのコンマ秒のようにビジュアルに増加するのでフィードの増加が手に取るようにわかる。
- Apple純正アプリと言われても気がつかないぐらいデザインがiPhoneのコンテキストを守っており、使っていてなんとも言えない安心感がある。
一番上のキャッシュできるという点はおそらく「無名の質」ではないだろう。しかし、それ以外は「無名の質」なのではないかと思う。ただ、これら「無名の質」は実際に使っていても気づくのが難しいし、ましてやどこが優れているかを論理的に説明して他人に勧めるのも難しい。
携帯電話の分野は技術的に飽和してきてユーザーの買い換えも鈍くなってきているが、こういった分野では、内蔵デジカメの画素数やCPUの速度、搭載メモリの量などに変わって、いかに「無名の質」を備えているのかで勝負がつく時代に入って来ているのだと思う。で、その携帯電話の分野における「無名の質」の多さでは今のところiPhoneが独走しているように思うが、この話はまた今度。
これは、Lean Software Developmentで言われている、「認知的統一性」ってのに近い気がしますね。