書評

「Web2.0が殺すもの」を読んで

Web2.0が殺すものこの本、最初から最後まで一貫してWeb2.0バブルに対して疑問を投げかける内容になっているが、主張していること自体はネガティブな意見ばかりであるものの、大体もっともな話ばかりで「Web2.0って何?」という人にも意外とおすすめである。また「1975年生まれ以後で単純に世代を区切ってしまうのはおかしい」という意見には筆者と同世代の私も少し共感。

が、最後まで読んでみてもこの本のタイトルである「いったいWeb2.0は何を殺すのか?」という疑問の答えは見つからない。実はこの本にはその答えは無く読者特典でダウンロードして読めるPDF版の6章(本は5章まで)に書いてある。この中で筆者はYahoo!とGoogleなど巨大なもの同士が戦った場合、殺されるのはそのどちらでもなく、案外その周りにいるものが流れ弾にあたって殺されるケースが多いとしている。そしてその例として高い収益を得ている新聞販売店の折り込み広告を挙げている。

私も知らなかったのだが、新聞販売店というのは折込チラシから莫大な収益を得ているそうだ。この本の筆者の試算によると、筆者の家に配送されている新聞の販売店の取り分は2178円だそうで、公称7000部配達していることになるので、月に1530万円、年にして1億8370円もの収入になるそうだ。もちろん新聞本紙を配送して得られる利益はこの利益とは別である。以前、新聞勧誘員に洗剤を20個ぐらいもらってすべて使うのに数年かかったことがあるがそれも納得だ。そしてこの利益がGoogleなどが個人の生活パターンや嗜好に合わせたローカル広告(メイドチラシ)に進出することにより、広告媒体が折り込みチラシからネットの広告にシフトして行き、その結果折り込みチラシは殺されると予測している。なるほどである。

ローカル広告の例としてe-まちタウンの提供するローカル情報サイトを紹介している。さっそく私が住んでいる横浜市の横浜タウンを見てみたが、360万人も住んでいる横浜市をひとくくりにするのは無理があるように感じた。ぜひとも区別にして欲しい。とはいえ東京23区は区別に渋谷区タウンや練馬区タウンなど区別に用意されており、ローカルのグルメ情報や不動産情報などが掲載されておりなるほど便利そうである。考えてみればこのような地域ごとのポータルサイトはありそうでなかったと思う。

ふと「ネット チラシ」で検索してみるとインターネットチラシサイト オリコミーオ!が一番に出てきた。早速自分の地元を見てみるが残念ながらほとんど地元のチラシは見つからなかった。今後に期待といったところだろうか。他にも近所の特売情報を提供する毎日特売、スキャナーで取り込んだ広告をそのまま載せているチラシドットコムもある。またソースネクストのソフトズバリ大安売りなども気になる。

これらローカル広告に個人の嗜好に合わせたカスタマイズも加えて「あなたにおすすめのレストランが近所にできました」とか「あなたが行ったレストランに行った人はこんなレストランに行っています」などすぐに出来そうだ。あるいはローカルと言っても住んでいるところだけでなく勤務先の情報を利用して「仕事帰りに一杯出来るのはここがおすすめ」とか、はたまたスケジュールを見て「来週の出張の際には地元のおいしいこのレストランはいかが?」などメイドチラシの夢は広がるしぜひとも出来て欲しい。(例がすべて食べ物なのは私の嗜好である)

しかしローカル広告を人の生活圏内の粒度ですべてのエリアで充実させるのはかなりの作業が必要で、スケーラビリティを確保するためになにかWeb2.0的な工夫が入りそうに思う。いずれにしてもローカル広告はまだまだ未開拓の巨大マーケットであることは確かで、この分野でGoogleとYahooが大喧嘩をしている間に流れ弾に当たって折込チラシがいつのまにか無くなる日が来るのかもしれない。

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